次世代の太陽電池:ペロブスカイト太陽電池とは?
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最終更新日: 2025年04月19日 土曜日

地球温暖化対策が急務となる中、太陽光発電は再生可能エネルギーの切り札として期待が高まっています。しかし、従来の太陽光発電技術であるシリコンベースのP型太陽電池には、変換効率やコスト、設置場所の制約など、いくつかの課題がありました。
そんな中、彗星のごとく現れたのが、ペロブスカイト太陽電池です。この革新的な技術は、太陽光発電の常識を覆し、エネルギーと暮らしの未来を大きく変える可能性を秘めています。
驚異的なポテンシャルと誕生秘話

ペロブスカイト太陽電池は、その名のとおりペロブスカイト構造を持つ材料を用いた太陽電池です。ペロブスカイト構造とは、特定の結晶構造のことで、この構造を持つ材料は、光を電気に変換する効率が非常に高いという特徴があります。
2009年、桐蔭横浜大学の宮坂力教授らによって、ペロブスカイト材料を用いた太陽電池の変換効率が3.8%という、当時有機太陽電池としては画期的な数値を達成したという論文が発表されました。この発表は、世界中の研究者たちを驚かせ、ペロブスカイト太陽電池の研究開発競争の火蓋を切ることとなりました。
それからわずか15年足らずで、ペロブスカイト太陽電池の変換効率は飛躍的に向上し、現在、研究レベルでは30%を超える変換効率も報告されています。
これは、従来のシリコンベースの太陽電池の理論限界をはるかに超える数値であり、ペロブスカイト太陽電池の驚異的なポテンシャルを示しています。
3つの強み:高効率、低コスト、フレキシブル

ペロブスカイト太陽電池は、従来のシリコンベースの太陽電池と比較して、以下の3つの点で優れています。
1,圧倒的な変換効率
2,低コストでの製造
3,設置場所を選ばないフレキシブル性
エネルギーの地産地消から宇宙開発まで

ペロブスカイト太陽電池は、私たちのエネルギーと暮らしの未来を大きく変える可能性を秘めています。従来は難しかったこともペロブスカイト太陽電池なら実現可能でしょう。
1,外壁やガラスなどに設置ができる
ペロブスカイト太陽電池は、建物一体型太陽光発電(BIPV)として、建物の屋根や壁に組み込むことができます。これにより、建物自体が発電所となり、エネルギーの地産地消を促進できます。さらに、太陽光発電システムの導入コストが低いため、個人宅や中小企業でも、今より遥かに導入しやすくなり、エネルギーの民主化にも貢献します。
2,電気自動車(EV)の普及を加速

ペロブスカイト太陽電池をEVに搭載することで、走行中に充電できるようになります。これにより、EVの航続距離が大幅に伸び、充電インフラの不足という課題も解消され、EVの普及が加速すると期待されています。太陽光で発電した電力をEVに直接充電することで、真のゼロエミッションモビリティを実現することができます。
3,ウェアラブルデバイスの電源に
ペロブスカイト太陽電池は、薄くて軽いフィルム状に作れるため、ウェアラブルデバイスの電源としても利用できます。これにより、ウェアラブルデバイスの充電の手間が省け、より便利に利用できるようになります。
また、IoTデバイスの電源としても活用できるため、IoTの普及にも貢献すると期待されています。
4,宇宙開発のエネルギー源として
ペロブスカイト太陽電池は、軽量かつ高効率であるため、宇宙開発のエネルギー源としても注目されています。人工衛星や探査機に搭載することで、長期的なミッションを可能にし、宇宙開発の新たな可能性を切り拓くことができます。
課題と展望:耐久性向上と鉛フリー化

耐久性の向上
ペロブスカイト太陽電池は、水分や熱に弱く、屋外での長期使用には耐久性の向上が不可欠です。現在、様々なコーティング技術や材料開発により、耐久性の改善が進められています。
例えば、ペロブスカイト層を保護するためのバリア層の開発や、水分や熱に強いペロブスカイト材料の開発などが行われています。
鉛の使用
ペロブスカイト材料には、鉛が含まれています。鉛は有害物質であるため、環境負荷を低減するために、鉛フリーのペロブスカイト材料の開発が急務となっています。
現在、スズやビスマスなどの代替材料を用いたペロブスカイト太陽電池の研究開発が進められており、近い将来、実用化されることが期待されています。
これらの課題を克服できれば、ペロブスカイト太陽電池は、太陽光発電の普及を加速させ、持続可能な社会の実現に大きく貢献することになるでしょう。
最新情報

2024年6月21日に閣議決定された『経済財政運営と改革の基本方針2024について』の中で基本方針として示されている、グリーントランスフォーメーション(GX)への投資促進が明記されており太陽光発電を含む再生可能エネルギーの導入拡大が中核を担うとされてます。ペロブスカイト太陽電池は、次世代の太陽光発電技術として期待され様々な取り組みが行われていくでしょう。
政府の支援策
高効率化、耐久性の向上、量産技術の確率など、ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた研究開発を支援し社会実装を早めることを目指します。
経済産業省は、開発事業予算を150億円増額し648億円の予算を計上し実証実験などの支援を行う方針です。
また、2025年度のFIT制度におけるペロブスカイト太陽電池の買取価格が、従来の太陽光発電システムより買取価格が10円以上高くなる見通しの報道もされています。
浮体式ペロブスカイト太陽電池の共同実証実験開始
積水化学工業、エム・エムブリッジ、恒栄電設の3社は、フィルム型ペロブスカイト太陽電池をプール上に設置するための共同実証実験を開始しました。
これは、軽量で柔軟なペロブスカイト太陽電池を、従来のシリコン系太陽電池では設置が難しかった場所に設置することで、再生可能エネルギーの導入量を拡大することが目的です。共同実証実験では、東京都北区の閉校となった学校プールに浮体式ペロブスカイト太陽電池を設置し、浮体構成、施工性、発電性能の実証を行います。
積水化学:浮体式ペロブスカイト太陽電池の共同実証実験開始
福島県での実証実験
2024年度には、福島県内でペロブスカイト太陽電池の実証実験が行われる予定で、県内3ヶ所で性能や耐久性、設置方法の検証が行われます。