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太陽光パネルリサイクル義務化の方針とその背景

公開日: 最終更新日: 2024年11月09日 土曜日

太陽光発電は、近年では設置を義務化する自治体も増えるなど、急速に導入が進み、現在も電気代の高騰やSDGsの観点などから、さらに太陽光パネル設置の需要が高まっています。

しかし、その急速な拡大に伴い、今後寿命を迎える太陽光パネルの大量廃棄問題が見えてきました。これに対応するため、日本政府は「廃棄費用積立制度」を設け、さらに「太陽光パネルのリサイクルを義務化」する方針を固めました。この記事では、これらの制度の背景と今後の動向について詳しく解説します。

太陽光パネルの普及と廃棄問題

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太陽光発電は、クリーンエネルギーとして広く認識されており、特に2011年の東日本大震災以降、原子力発電や火力発電に代わるエネルギーとしての期待が高まり、政府の補助金政策や固定価格買取制度(FIT)などに後押しされる形で急速に普及しました。
2022年度末時点で、日本の太陽光発電の累積導入量は約8,500万kW(パネル容量DCベース)に達し、これは世界で中国、米国に次ぐ第3位の導入量となっています。

しかし、その反面、設置された太陽光パネルの寿命は20〜30年程度とされており、2020年代後半から2030年代にかけて、初期に設置されたパネルが寿命を迎え、大量に廃棄されると予想されています。環境省の推計によると、2040年代前半には年間最大50~80万トン程度に達する見込みです。

現在、太陽光パネル撤去後は大半が埋め立て処分されており、耐用年数の長さから現在は大きな影響は出ていないものの、現行の廃棄物処理システムでは対応しきれないという懸念が高まっています。

太陽光パネルには、ガラス、金属(アルミニウム、シリコン、カドミウム、鉛)、プラスチックなどの素材が使われており、一部の素材はリサイクル可能であるものの、2021年時点でリサイクル処理能力は年間約7万トンと大きく不足しています。
技術的な課題やコストもネックとなり、十分なリサイクル体制が整っていないため、このままでは、不法投棄や環境汚染のリスクが高まります。また、パネルに含まれている貴重な資源を有効活用できないという問題もあります。

リサイクル義務化の動き

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こうした背景を受け、2024年9月に、環境省と経済産業省は合同で「太陽光発電設備リサイクル制度小委員会」を設置し、リサイクル義務化に向けた具体的な議論を開始しました。この動きは、日本が抱える廃棄物問題の解決に向けた重要な一歩であり、政府は法制化を視野に入れた検討を進めています。

特に、リサイクル義務化が進めば、使用済みパネルの不適切な処理や違法投棄の抑制が期待され、資源の有効活用と環境保護が両立できるとされています。義務化によって以下の点が強化される見込みです。

対象範囲の拡大:産業用だけではなく、住宅用の太陽光パネルも義務化の対象に含める方向。
費用負担の明確化:現在製造業者、販売事業者、発電事業者、消費者それぞれがどの程度の負担をするのか。
処理体制の整備:リサイクル施設の増設や、処理技術を向上させることでより多くの太陽光パネルを処理できるよう体制を構築します。

(以下、2024年9月3日朝日新聞デジタルより抜粋)

『太陽光パネルから取り出したガラスやシリコンなどは再利用し、資源の有効活用を図る。有識者会議では、リサイクルしやすいパネルの回収方法を検討する。

 海外では欧州連合(EU)が12年に使用済み太陽光パネルの回収・リサイクルを義務化した。米国では州ごとに規制が進む。中国では規制の検討段階という。

 太陽光パネルのリサイクル義務化と合わせ、日本発の「ペロブスカイト太陽電池」の普及も後押しする。軽量で薄く、曲げられるのが特長で、ビルの壁面や車の屋根などに設置できる。しかし耐用年数が10年程度と従来の太陽光パネルより短いため、リサイクル費用を一部補助し、循環サイクルを整えることも検討している。』

ペロブスカイト太陽電池の主な原料となるヨウ素は、世界シェア2位の約30%程(1位はチリが約60%)を日本が占めているため、、経済安全保障の点でもメリットがあります。
まだ寿命の問題や変換効率の向上など課題はありますが、世界的に大きな占有率を占める安価な中国製太陽光パネルに代わる存在として育てば、世界市場をリードすることも可能となるでしょう。

太陽光パネルリサイクルの課題

太陽光パネルのリサイクルを義務化するといっても、まだ多くの課題が残されています。
ここからは主な課題を3つのポイントに分けて解説します。

問題点①リサイクル費用の負担は誰がするのか?

生産者(販売業者)による負担


商品価格への転嫁
:現在販売している太陽光発電システムの価格に上乗せして費用をまかなうため、現在導入を促進している太陽光発電システム導入が足踏みしてしまう可能性があります。

基金の設立:製造・販売業者で共同の基金を設立し、リサイクル費用を積み立てて拠出する方法です。販売業者が倒産などした場合でも、リサイクル費用が用意できますが、基金に多くの企業の参加が必要なためハードルが高いと考えられます。

罰金制度:製造・販売業者に一定量以上のリサイクルを義務とし達成できない場合は、罰金を科すことで、強制的にリサイクル費用を捻出します。

 

利用者や税金による負担

 

預託金制度:車を購入する際に支払うシステムのように、所有者が事前に廃棄となる際にかかる費用を負担する制度です。途中で所有者が変更となった場合は手元に帰ってきます。あくまでもリサイクル費用は最終的な所有者が支払うという制度です。

使用後徴収制度:冷蔵庫などの家電製品と同じように、廃棄する際に徴収する制度です。廃棄となる際に支払うため、将来的にリサイクルコストを圧縮することが出来る技術などがある場合は、購入時に支払う預託金制度より安く済む可能性がありますが、不法投棄される可能性が高くなります。

再エネ賦課金に上乗せする:現在、固定価格買取制度(FIT)分の負担とされている、再エネ賦課金に上乗せする形で電気利用者全体で負担する形です。再エネ賦課金に上乗せする場合、太陽光設置・未設置にかかわらず、国民全体の負担が増える形となりますので、ただでさえ電気代が値上がりしている現状では、国民からの反発も大きくなるでしょう。

問題点②リサイクル施設の不足

現在、国内のリサイクル施設は太陽光パネルの廃棄量に対して十分ではありません。
太陽光パネルはガラスやシリコン、アルミニウム、プラスチックなど多様な素材で構成されており、リサイクルには高度な技術が必要です。適切に分解・処理するための専門設備と技術を持った施設がまだ少なく、リサイクル事業者の技術や設備に対する国の支援や補助金制度が必要となります。

問題点③不法投棄の防止、監視体制の強化と罰則の厳格化

大量の太陽光パネルが寿命を迎える今後、不法投棄が増加するリスクも高まります。特に、適切な廃棄処理の知識やコストを抑えようとする業者によって、不法投棄や無許可の埋め立てが行われる懸念が指摘されています。

監視体制の強化:不法投棄を防止するために、監視体制の強化が必要です。例えば、地域の自治体や環境保護団体と協力し、適切なパネルの処理を監視する体制を構築することが考えられます。

罰則の厳格化:不法投棄が発覚した場合、罰則を厳格化することで、未然に防ぐ効果が期待されます。罰金や業務停止などの厳しいペナルティを設けることで、リサイクルや適切な廃棄処理への意識向上が促進されるでしょう。

まとめ

日本では、太陽光パネルの急速な普及により、その廃棄やリサイクルの問題が無視できない課題となっています。廃棄費用積立制度やリサイクル義務化の動きは、持続可能なエネルギー社会の実現を目指す重要な取り組みですが、リサイクル費用の負担者の明確化、リサイクル施設の整備、不法投棄の防止といった課題の解決が欠かせません。
これらが制度として整い、効果的に運用されることで、太陽光発電は真に環境に優しいエネルギー源として、日本のエネルギー基盤を支える存在となるでしょう。

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